ソラシドトリガー! -Sorashido Trigger!-

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大切なのは、一歩を踏み出す勇気。きららの新星『星屑テレパス』第1巻感想

自分はまんがタイムきらら系列の漫画作品が好きで雑誌も購読しているのだが、予算や読書時間や本棚のスペースなどの問題から購読していたのはキャラットとMAXの2つだけで、きらら(無印)とフォワードのことは「作品名は幾つか知ってるけど読んだことがない」状態が続いていた。しかし、昨今の外出もままらない現状と芳文社運営のアプリ「COMIC FUZ」の月額プランなら安価できらら系の雑誌全てが読めるということで今年の春頃にそちらへシフト。

 

既に購読していた2誌(キャラット&MAX)を追いつつ、これを機に読み始めた2誌(無印&フォワード)から、面白い漫画でも無いかな~と思いながら一通りチェックしていた処、「なんだこの漫画・・・面白すぎんだろ・・・!!!」、突然、そんな感情が芽生えた作品がある。そう思わされたのは、まんがタイムきらら連載、大熊らすこ著、『星屑テレパスという作品。

 

星屑テレパス 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 

 

 

まずこの作品のストーリーを簡潔に紹介すると、超あがり症で人とうまく話せない宇宙に憧れを持つ主人公・小ノ星海果(このほし うみか)は高校入学初日、自らを宇宙人と名乗る同級生・明内(あけうち)ユウと出会い、憧れや自分の居場所を見つけるために宇宙へ行きたい海果と、宇宙船が故障してしまい帰れなくなったユウは、共に「宇宙を目指す」という目標を打ち立て、一歩ずつ夢へと近づいていくという話。

 

自分が最初に読んだのはきらら無印2020年4月号、単行本で言うところの第11話。いかんせん途中から読み始めたのでストーリーは「?」な部分もあったが、美麗な絵柄に心を奪われる独特の心理描写、そして主要キャラの1人が宇宙人という突飛な設定。これらの3つの要素がまさにどストライクで、自分の中のきらら推し作品ランキングにて一気に2位くらいまでランクインした。自分自身、きらら漫画は「1に絵柄、2にストーリー」という順列をクリアして作品を好きになっていく傾向があるのだが、この作品はその2つを同時にクリアしてしまった。

特に、心理描写が他の作品と比べても群を抜いている。海果の不安や緊張や宇宙への憧れが現れた表現や、ユウの曇りのない明るさ。明暗がはっきりと分かれており、そのきらきらとした眩しさや、心をえぐられそうな闇が、それがまた虜にされる。個人的に好きなのは2話冒頭の海果の夢のシーン、2話冒頭の夢の描写、小型UFOに乗って自分の居場所を探す海果、可愛げあるがどこか寂しそうな部分を感じられる。

 

 

seiga.nicovideo.jp

 ↑ここで5話まで読めるから読んでない人は読んでください。

 

 

きららでは、何となくだけど作品のパターンとして「ポジティブ思考な主人公が持ち前の明るさで周りを変えていく」のと「内気な主人公が周りの影響などを受けつつ徐々に成長していく」の大きく2つに分けられてるイメージがあり(勿論個人的な考えで、パターンは他のもある)、例えば前者なら『恋する小惑星』で、後者なら『ぼっち・ざ・ろっく!』だろうか。

『恋アス』は、当初は堅苦しさや壁があった地学部をみらの持ち前の明るさで一つにまとめていたのが爽快だったし、『ぼざろ』は本筋及び、ひとりのコミュ障っぷりが大半はギャグ調で描かれてはいるがその中でもしっかりと登場人物の成長が描かれている。

 

この『星屑テレパス』は前例だと後者側の作品だが、海果の人見知り具合は劇中では"コンプレックス"として描かれている。当の海果自身も、「地球には自分の居場所が無い」と語りだす具合で、それがより宇宙への憧れを強くしている。そんな中でユウや遥乃のように背中を押してくれる・力を貸してくれる存在はいるが、それ故に瞬を説得する際にはそれを「自分の言葉じゃない」と評されてしまう。それでも、海果の人一倍強い宇宙への思いは、周りの人からは「ギャグ」だとあしらわれたユウが宇宙人であることを最初から信じていたり、随所で挿入される彼女のモノローグや、ユウの「おでこぱしー」から伝わる思いからも伺える。

 

宇宙人のユウが持っている特殊能力「おでこぱしー」はユウと相手のおでこを合わせることで相手の思いが伝わる能力で、人と上手く話せない海果のその強い思いをはっきりとユウに伝える、2人の心をうまく繋ぎ止めるのに一役買っており、それこそ『NEW GAME!』の「今日も一日がんばるぞい!」のような、後述で紹介するインタビューで語られた「作品の取っかかり」となる要素になっている。

でも、「おでこぱしー」で思いが伝わるのはユウだけ。他の相手に対しては言葉で思いを伝えなければならない。それは自分で発することができればきちんと相手にも伝わる。だからこそ、瞬に宇宙に行きたい理由を伝えたり、林間学校にて自分の意見を発表するシーンなどは勇気を振り絞って自ら切り出している。自分語りで申し訳ないが、自分も口下手な部分があるのでああいうシーンはかなり共感しながら読んでいる。

 

そういうのもあってか、自分はこの『星屑テレパス』は「初めの一歩を踏み出す大切さ」ももしかしたらテーマの一つなんじゃないかなと推測している。

宇宙を題材にしていることもあって、かの有名な宇宙飛行士、ニール・アームストロングの至言「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。」ともかけているのかもしれない。だからこそ、人と話すのが苦手な海果が勇気を出して自分の思いを自分の口から相手に伝えるのも、この作品的に言い換えるなら、「周りにとっては何の変哲も無い場面だが、海果(たち)にとっては大きすぎる一歩」、それらのシーンを読みながらそんなフレーズがよぎる。

海果の描写以外でも、宇宙へ行くためのロケットは作れないからまずペットボトルロケットを作って飛ばす所から始める展開や、作者の大熊先生のインタビューにて語られた、一度は諦めた漫画家という夢を再び叶えようと思わされたエピソードなどから、割とこの説濃ゆいんじゃないかと勝手に思っている。

 

media.comicspace.jp

 

 

話は変わるが、 個人的に勧めたいのが、鏡さんというキャラ。彼女は海果のクラスの学級委員長で、第1巻の中では2ページ、コマにして5コマしか登場していない*1、所謂名有りのモブキャラなのだが、この鏡さんがまた魅力的で。

林間学校にてワークショップをやることになった際、海果とユウの班の班長にいつの間にか就任する場面が初登場なのだが、自分はこの時「あっこの娘はよくある出しゃばりで自己中なキャラだな」と思い込んでいた。しかし結果は真逆で、海果の意見にしっかりと耳を傾けていたり、風呂でユウと一緒にはしゃいだりと、しっかりした性格で可愛げもあり、自分の予想の逆を突かれたのもあってか、たった5コマの登場シーンで「この娘、推せる!」となってしまった。この先も出番あるといいな…。皆も鏡さんをすこれ。1巻112ページの2コマ目、ここの描写が最高なんです。

 

 

きららを読み始めて約3年、これまで『どうして私が美術科に!?』や『RPG不動産』など、高いポテンシャルを持った未アニメ化作品に出会ってきた。しかし、その中でも『星屑テレパス』以上に心を奪われた作品は初めてかもしれない。1巻が出るまでのこの1ヶ月は本当に待ち遠しかった、リアル方面で辛いことがあっても「月末には星屑テレパスの1巻が読めてるんだ!」とポジティブ思考で乗り越えられた。しばらくは、この作品を生きがいに生きていきたい。

アニメ化して欲しいとまでは言わないから、作者が納得するタイミングまで続いて欲しい。けどやってくれるのであればアニメ化して欲しい。そう思いながら、毎月9日が待ち遠しくなってきている。

 

 

*1:もしかしたら11話にも1コマだけ出ているかもしれない