ソラシドトリガー! -Sorashido Trigger!-

前略、画面の前の読者様 このブログに書かれてることは的外れな主観です。だから決して、このブログの記述は鵜呑みにしないで下さい。

おれの親父の話

去年の春頃、親父が定年を迎え退職した(厳密には定年延長したが)。

おれがまだ幼かった頃は9時過ぎの帰宅がデフォルトで、休みの日も仕事でのストレスが抜けきっていない様子が垣間見えていたが(本人曰くほぼブラックだったらしい)60手前から何度か転勤を重ね、その先々で観光しその場で撮った写真を家族のグループLINEに上げていて、その姿はどこか楽しそうに見えていた。退職後も小遣いが欲しいという理由でパートの仕事を週に何回か入れつつ、家ではテレビやYouTubeで犬の動画を観たり落語を聞きに行ったりと好きなことを思う存分やれている親父の姿を見て安心していた。

 

 

思えば、おれも親父を尊敬するようになったのは5~6年前ぐらいからで、それまでは星一徹のようなスパルタで時代遅れの酷い父親とも思ったことさえあった(流石にちゃぶ台返しはしてない)。おれ自身が棘だらけの痛いクソガキだったこともあってか、親父とは何度か喧嘩していた。あの頃の親父は仕事でストレスが溜まっており、おれも労働環境の「ろ」の字も知らないアホだったから、お互い容赦なく罵倒できたのだろう。こういうのが、思春期にありがちな親子喧嘩のテンプレなのだろうか。

一番酷かったのは、中学の卒業間近だった時のこと、学校側の粋な計らい(皮肉)で卒業式当日に親へ渡す感謝の手紙を書くことになった。しかしそこは反抗期のクソガキのサガと恥ずかしさでまともにアイデアが浮かばなかった時、また親父と下らない理由で喧嘩してしまった。その時おれも何かスイッチが入り、手紙にこう書いた。「親なんて尊敬できない、ただうるさいだけだ。まだ宮藤官九郎の方が尊敬できる(意訳)」・・・アホかと言いたくなる感謝のかけらもない内容、あろうことかそのまま提出し、当然書き直しを食らったのは言うまでもない。つーか日本で親より宮藤官九郎を尊敬してると言ってた中学生っておれだけだよね。言っとくけどマジで書いたからね。

まぁ、今の子供たちも親や先生よりも炭治郎やしのぶさんを尊敬してるみたいだし、それが子供なんだろうな。親の大変さが分かるのは高校生ぐらいになってからでいいよ、20歳超えてもそれが分からないヤツはアカン。

 

 

自分の場合、親の大変さを理解したから親の有難みに気付けたというのもあるけど、一番のきっかけは親父と2人で色々なところを回りながら自分の想いを正直に話せたからだと思う。

親父の単身赴任中は何度か親父の所に遊びに行った。親父と車で観光地を巡りながら、道中に悩みを打ち明けたりもした。昔は割と話すたびにいざこざを起こしていた記憶があるが、この時からお互いの気持ちを汲み取りつつ話せるようになってきた。当時のおれは、社会に出るかどうかを決める大事な時期で、どうすればいいのか決められずにいた。でも、そんな時に親父は家にいない。オカンや先生にも色々お世話になったりしたが、一番本音で話せた相手は親父だったかもしれない、だからこそ、LINEを通して送ってくれたアドバイスや、貴重な顔を合わせて話せる時間が尊く感じ、次第に純粋な尊敬へと変わっていったのだと思う。

 

 

そして親父は冒頭の通り、定年を迎えて去年から家に戻って来た。帰ってきてからは暇なので家事をやりつつ、テレビを観たりしながら余暇を過ごしている。ただ、我が家のテレビ優先権を握ってるので朝だろうとゴールデンだろうとだいたいNHKか巨人戦に回される。でもニチアサや逃走中のある日はそっちを観せてくれるのであまり文句は言えない。

親父は巨人ファンだが原監督が嫌いで、しょっちゅう原采配を批判している。確かに継投のタイミングなどは素人目から見ても疑問符だったが結構ボロクソに貶している。我が家で野球の話が分かるのがおれだけなので、おれが暇な時は親父の話に付き合っている。親父は巨人の次期監督は江川がいいと言っていたが空白の一日によるイメージ面に加え年齢面とここまでコーチに就任すらしてない現状から多分無理だろうとは思う。おれは落合なら面白くなりそうと考えているが本人が就任を否定したのと今はウマ娘に夢中らしいので江川より可能性は低いんだろう。ちなみに親父は落合はそんな好きじゃないらしい。

 

 

 

親父は野球以外にも、車や雑学など幅広い分野に精通しており、話してて面白い。サブカルには疎い昭和の人なのでアニメや特撮などはさっぱりながら(でも大分の日田に勤務していたことがあったので進撃の巨人の作者が日田出身なのは知ってる)宮内洋のことを知ってたのは意外だった、去年のライダー特集番組のVTRで倉田てつをが出た時に「なんか(ドラマ)あったな」と言いだした時は肝が冷えたけど。

そんな中で唯一悔いが残ってることが一つだけある。それは、おれが大河ドラマ『いだてん』の視聴を途中で止めてしまったこと。親父は大河を毎週欠かさず視聴しており、おれは『木更津キャッツアイ』が日本で一番面白いドラマだと断言する程のクドカン信者なのでこれは是非親父と語れるチャンスだと思っていたのだが、多忙や録画容量の問題もあって序盤までしかろくに視聴できず泣く泣く積んでた録画を削除。その一方で親父は『いだてん』を「わけのわからないドラマ。官九郎ダメだわ」と痛烈に批判。確かにあの作品は賛否分かれていたが、実親から好きな脚本家とセットで叩かれたのはダメージがでかかった。くそっ、おれもちゃんと観てれば「親父、違うんだ。クドカン作品の魅力はね・・・」みたいに反論できたのにな。でもうちの親父は『いだてん』に限らずクドカン作品全般が合わないとは思うけどね、三谷幸喜はそうでもないけどクドカンは合わないタイプだと思う。

 

 

 

というか親父は原監督やいだてんといい、自分の気に入らなかったものは正直に批判する性格なので、ネットはやらせちゃいけないタイプなのは間違いない。絶対レスバに発展する。実際、嵐ファンのオカンの前で「嵐は歌が下手」と言ってオカンを軽くキレさせたからな。ネットで言ったら間違いなく集中砲火を浴びるぞ、やめておけ。でもドラマなどの細かい描写を見抜く点はかなりあると思う、この前NHKでやってた芦田愛菜のドラマで、主人公が油絵を描くシーンなどを観て「制服で油絵を描くのはおかしい」「油絵が数時間で乾く訳がない」と指摘していた。どうやら親父も昔油絵を描いたことがあったみたいなので見抜けたんだろうけど、一応ネットで作品の感想をちょっとだけ書いてる身としては細かい粗を見逃さないという観察眼は欲しい能力なので、荒らしをスルーできればインフルエンサーになれると思う、ファザコン視点とかじゃなくて客観的に見ても親父は頭がいいので。SNS向きの性格じゃないのでやりたいと言い出したら是が非でも止めるが。でもネットリテラシーはある方でネットのデマネタに踊らされたりしないし、何とは言わないがYouTuberに抱いてる考えが自分とほぼ一致していたのは驚いた、やっぱそういうところは親子なんだろうか。

 

 

 

一昨年もこんなことを言った気がするが、たぶん親父は20年後にはもういなくなってるかもしれない。もしかしたら10年、5年もない可能性は十分ある。志村けんトニー谷が逝ってしまった時の年齢に近づいているんだから、もう他人事じゃなくなってきている。そのことは親父自身も自覚していて、「俺が死んだらお前らはうんたらかんたら」みたいなことをよく言っている。

思えば、今のところ親孝行らしいことは全くできていない。犬を飼いたがっているようだが今の家の狭さじゃ飼えない。ハワイに行きたがってたこともあったが今のご時世じゃ行けないしこれがいつまで続くか分からない。それに最近金欠なのであまり高いものは買えない、どうしたらいいんだろうと思っていたら、こんなことを言い出した。「早く自立して家を出ていくことが一番の親孝行」・・だと。・・・ぐうの音も出ない。内心では生活費を毎月払ってるとはいえ、いつまでも親のスネをかじって生活するのも申し訳なく思ってるけど、決心がつかずにずっと引き延ばしてたままなのは否定できない。今のところは出ていけと言われない限りは自立できないんだろうなぁ・・・、情けないぜ。

 

・・・・ものすごく臭いことを言うが、なんだかんだ親よりも長く生きることが一番の親孝行なんかもしれんなぁ。子供の方に早く死なれたらなんとも言えないやるせない気持ちになるのは某タレントの件で身に染みて知ったし、うちの祖母が亡くなった時のオカンはやっぱ泣きそうになってたから、もしもおれが親がいる内に事故でもなんでも死ぬようなことがあったら・・・と思うとちょっと言葉では言い表しにくい。そんなこと言ってるおれも『俺の家の話』を観て子は親よりも長く生きなきゃいけないんだなと思わされたし、親不孝者だとしても、親を悲しませるようなことはなるべくしないでおこう。

ちょっと話が親父うんぬんからズレたが、親父とはいずれ京都や九州に旅行に行くと計画しているので、この先世の中がどうなるかは分からずとも、実現させるためには親子ともども健康でありつつ、生き続けなければならない。いつか終わりが来てもいいようにある程度覚悟は決めているが、その終わりが来るまで、どんな小さなことでも親父から学べることがあるなら一つでも多く吸収したい。今まで著名人なりネットのインフルエンサーなり色んな人から影響を受けたりしてきたけど、一番尊敬してる、一番なりたい人物なのはやっぱりうちの親父なんだから。